エミッタ接地回路では電圧を増幅することができました。ここでは、電力を増幅するエミッタホロワ回路を紹介します。具体的には、回路構成や動作原理などを紹介します。


エミッタホロワ回路
ここでは、エミッタホロワ回路の構成とその動作特性を紹介します。
エミッタホロワ回路の回路構成
エミッタホロワ回路の構成を図1に示します。この回路では、Vbを用いて負荷REに供給する電力を制御します。

エミッタホロワ回路の動作特性
エミッタホロワ回路の負荷にどのような電流が流れ、どのような電圧が印加されるか考えます。
負荷に印加される電圧はVeになります。エミッタ電圧は次の式で表せます。
$$V_{E} = I_{E} R_{E} = V_{B} – V_{BE} $$
この式から分かるとおり、負荷には、負荷抵抗によらず、ベース電圧からベースエミッタ間の電圧降下を引いたものが印加されます。ベースエミッタ間の電圧はpn接合の順方向電圧降下なので0.6V程度のオーダーとなります。また、トランジスタが動作するために、Vb<<Vccである必要もあります。ポイントは、ベースエミッタ閉回路の特性により負荷電圧が決まるという点です。
続いて、電流について考えます。負荷に印加される電流はエミッタ電流であり、次の式で表せます。
$$ I_{E} = I_{C} + I_{B} \approx I_{C}$$
活性領域であれば、コレクタ電流>>ベース電流であるので、エミッタ電流はコレクタ電流となります。ポイントはコレクタエミッタ閉回路の特性により負荷電流が決まるという点です。
以上が負荷にかかる電圧と電流の特性になります。電圧はベースエミッタ閉回路により決定され、電流はコレクタエミッタ閉回路により決定されます。
エミッタホロワ回路の問題点
図1のエミッタホロワ回路には大きな問題点が二つあります。ベースエミッタの特性によるものです。ベースエミッタはpn接合つまりダイオードのような動作をするので入力電圧Vbに対して出力電圧VEは図2のようになります。

ベースエミッタ間のダイオードによりプラスのみの電圧印加、
電圧ゼロ点のずれが発生するという問題が発生する
このグラフから問題点が二つ考えられます。
問題点①:正電圧しかエミッタに印加できない。
問題点②:pn接合の電圧降下により、電圧ゼロ点がずれる。
以降では、この二つの問題を解決するために、回路を修正します。
プッシュプル回路の活用(B級アンプ)
正電圧しかエミッタに印加できない問題について考えます。この問題については、正電圧を印加する回路をもう一つ利用して負電圧を印加できるようにします。具体的には図3のような回路を利用します。

プッシュプル回路で負電圧も出力できるようになる
VB>0の時、npnトランジスタの回路から電流が流れます。VB<0の時、pnpトランジスタの回路から電流が流れます。このようなプッシュプル回路を利用することで、負電圧も出力することができます。
プッシュプル回路利用時の出力波形を図4に示します。

正弦波のような波形を出力できるようになる
ただし、順方向電圧降下領域で適切な動作が難しい
このように負電圧を出力できるようになりましたが、電圧降下の影響により電圧ゼロ点がずれています。このことをクロスオーバーひずみといいます。クロスオーバーひずみを無視してもよいのですが、サウンドなどでは問題になりうるのでこれを除去します。
なお、このような増幅回路をB級アンプと呼ぶこともあります。
コンプリメンタリプッシュプル回路の活用(AB級アンプ)
クロスオーバーひずみが発生するのは、電圧降下による影響です。したがって、入力信号に電圧降下を考慮したバイアス成分を加えることで、クロスオーバーひずみを打ち消すことができます。波形イメージは図5のとおりです。

正方向・負方向それぞれに電圧降下分のバイアス
を乗せることで正弦波出力が可能になる
バイアスを加える手法としてダイオードを利用するものがあります。ダイオードを利用したコンプリメンタリプッシュプル回路を図6に示します。

ダイオードを利用することで、ベースへ印加される電圧はダイオードの順方向電圧降下分だけ増加もしくは減算されます。なお、ダイオードは導通状態にしておく必要があるため、抵抗を介してVccと接続します。
なおこのような増幅回路をAB級アンプと呼ぶこともあります。
このような回路を組むことで、きれいに電力増幅を行うことができます。
まとめ
このページでは、トランジスタを用いた電力増幅回路(エミッタホロワ回路)を紹介しました。ポイントは以下のとおりです。
- エミッタホロワ回路を用いることで電力を増幅できます。エミッタホロワ回路では、負荷電圧はベースエミッタ閉回路、負荷電流はコレクタエミッタ閉回路から導出されます。
- エミッタホロワ回路では正の電圧しか利用できません。交流信号など負の電圧を増幅するためには、プッシュプル回路を利用する必要があります。
- トランジスタのベースエミッタの電圧降下により、クロスオーバーひずみが発生します。ダイオードなどを用いてバイアスをかけて補償することができます。この回路をコンプリメンタリプッシュプル回路と呼びます。
