サイリスタによる三相全波整流回路のシミュレーション

別ページにてサイリスタを利用した三相全波整流回路の理論を紹介しました。このページでは、Simscapeを用いて、動作確認を行います。

サイリスタの動作特性

はじめにサイリスタのターンオン、ターンオフ動作を確認します。図1にシミュレーションモデルを示します。交流電源とサイリスタと抵抗から回路は構成されます。サイリスタのゲート信号は矩形波として与えられます。

図1 サイリスタの動作確認回路

その時のシミュレーション結果を図2に示します。ゲート信号がきたタイミングでターンオンし、電源電圧が負になったタイミングでターンオフすることが分かります。

図2 サイリスタの動作シミュレーション結果
ゲートオンによりサイリスタがターンオンする
電源電圧によりサイリスタがターンオフする

サイリスタを利用した全波整流回路のシミュレーションモデル

全波整流回路もモデリングします。図3にモデルを示します。モデルは主回路部とサイリスタのゲート信号生成部に大別されます。(ゲート信号生成部については別ページにて解説します。)

図3 サイリスタによる三相全波整流回路のシミュレーションモデル

電源電圧は100V, 60Hzとします。サイリスタの制御角αを変更して、出力電圧波形の変化を確認します。

サイリスタによる全波整流回路のシミュレーション結果

サイリスタによる全波整流回路のシミュレーションを行います。制御角αが0°、30°、60°全波整流回路の動作結果を測定します。

α=0°の場合

α=0°の場合の波形を図4に示します。この時、ダイオードブリッジと同一の動作をします。上側アームの結果(緑色:Vp)は最大値選択、下側アームの結果(紫色:Vn)は最小値選択となり、それらの差分である、出力波形(シアン:Vload)が形成されます。なお、平均電圧は133Vになります。

図4 α=0°の時のシミュレーション結果
ダイオードによる三相全波整流回路と同じ波形を取得できる
Moving Averageブロックを用いて得られた平均電圧は133Vとなる

α=30°の場合

α=30°の場合の波形を図5に示します。この時、ダイオードブリッジと比較して、ターンオンタイミングが位相角30°遅れます。時間に換算すると、周波数60Hzのため、1/60 * 30/360 = 0.0833 s遅れることになります。実際、上側アームの出力波形(緑色:Vp)および下側アームの出力波形(紫色:Vn)のターンオンタイミングが遅れています。これらにより、差分である出力波形(シアン:Vload)が形成されます。なお、平均電圧は115Vになります。

図5 α=30°の時のシミュレーション結果
ターンオンのタイミングはダイオードより遅れていることが確認できる
Moving Averageブロックを用いて得られた平均電圧は115Vとなる

α=60°の場合

α=60°の場合の波形を図6に示します。この時、ダイオードブリッジと比較して、ターンオンタイミングが位相角60°遅れます。時間に換算すると、周波数60Hzのため、\(\frac{1}{60} \times \frac{60}{360} = 0.1667 \)s遅れることになります。実際、上側アームの出力波形(緑色:Vp)および下側アームの出力波形(紫色:Vn)のターンオンタイミングが遅れています。これらにより、差分である出力波形(シアン:Vload)が形成されます。なお、平均電圧は66Vになります。

図6 α=60°の時のシミュレーション結果
ターンオンのタイミングはα=30°のときより遅れていることが確認できる
Moving Averageブロックを用いて得られた平均電圧は66Vとなる

直流平均電圧のまとめ

\(\alpha = 0, 30, 60\)で得られた直流平均電圧が計算式と一致しているか確認します。比較結果を表1に示します。解析解とシミュレーション解ではほぼ一致した結果が得られています。解がずれているのは、シミュレーションにおいてはサイリスタの順方向電圧降下やオン抵抗による電圧降下が考慮されているからです。

制御角解析解シミュレーション
α=0°135V133V
α=30°117V115V
α=60°68V66V
表1 解析解とシミュレーション結果の比較

このように、制御角αを制御することで、直流電圧を制御することが可能であることが確認できます。

補足 α>60°の場合

先ほどのシミュレーションにおいて、α>60°とすると動作しません。例えば、α=90°としたときの波形を図7に示します。出力電圧がマイナスにならないように動作しています。これは、別ページにて解説した波形とは動作が異なります。

図7 図3のシミュレーションモデルを用いた場合のα=90°の波形
よく教科書で見かけるようなマイナスの負荷電圧にはならない。

これを解消するためには、負荷側から電源側に回生する電源を追加します。例えば、図8のとおり負荷と並列に電流源を追加してみます。この時のシミュレーション結果を図9に示します。図9では別ページにて解説した波形と同一の波形を得ることができます。

図8 負荷回路の修正
電流源を並列に接続する
図9 電流源を並列に接続した場合の出力波形
教科書の通り、マイナスの負荷電圧を得ることができる

なお、直流送電などでは、このようなインバータ運転も行いますが、電解用途向け整流器などでは負荷側に電源はありません。このような制御角で運転しないように設計する必要があります。

まとめ

このページでは、サイリスタを利用した三相全波整流回路のシミュレーションを行いました。ポイントは以下のとおりです。

  • サイリスタがターンオンタイミングをゲート信号で制御できるデバイスであることが確認できました。
  • サイリスタを利用した全波整流回路のモデリングを行い、理論どおりの波形を得ることができました。
  • 直流平均電圧は理論値とほぼ一致しました。このページのモデルで若干の誤差が発生したのは順方向電圧降下やオン抵抗による電圧降下によるものです。
  • 制御角が60°を超えると、出力電圧が負になるタイミングがあります。ここできちんと動作させるためには、負荷側に電源が必要となります。
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