別ページにて、直流モーターの概要を紹介し、励磁回路が重要なことを紹介しました。このページでは、各励磁回路に応じた直流モーターの特性を評価します。


直流モーターの特性
直流モーターの特性は、端子電圧を一定にした時の負荷電流と回転速度を示した速度特性と、端子電圧を一定にした時の負荷電流とトルクを示したトルク特性があります。
速度特性とトルク特性は励磁方式により異なるため、以下では励磁方式ごとに紹介します。
永久磁石式・他励式・分巻式の速度特性、トルク特性
永久磁石式、他励式、分巻式において、成立する微分方程式を考えます。DCモーターの回路イメージを図1に示します。

電機子の回路においては次の式が成立します。
$$V_{dc} = R_{a} I_{a} + L_{a} \frac{dI_a}{dt} + k_v \omega$$
左辺は電源電圧、右辺第1項は電機子抵抗の電圧降下、右辺第二項は電機子インダクタンスの電圧降下、右辺第三項は逆起電力を指しています。
また、回転系においては次の運動方程式が成立します。
$$ J \frac{d \omega}{dt} = k_t I_a – D \omega – T_{load}$$
右辺はトルクを示しており、右辺第一項はモーターで発生する電気的なトルク、右辺第二項はモーターの回転による摩擦トルク、右辺第三項は負荷トルクを示しています。
ここで、トルク係数・逆起電力係数について考えます。永久磁石式・他励式・分巻式においては、負荷の状況によらず磁束を供給することができます。
トルクは電機子電流に比例し、トルク係数は次の式で計算することができます。
$$ k_t = \frac{\tau}{I_a}$$
定格トルクや定格電流などから、トルク係数を計算します。永久磁石式においては、この値は安定しています。
次に、他励式のケースを考えます。他励式の場合は、界磁巻線の電流に比例した磁束が発生します。つまり、トルク係数も界磁巻線電流に比例します。電機子と界磁巻線の相互インダクタンスをLafとすると、トルク係数は次の式で表されます。
$$ k_t = L_{af} I_f = \frac{V_f}{R_f + j \omega L_f}$$
Vfは界磁巻線の電源電圧、Rfは界磁巻線の抵抗、Lfは界磁巻線のインダクタンスを示します。
次に、分巻式のケースを考えます。分巻式の場合は、他励式の電源電圧がモーター電圧になります。つまり次のとおりです。
$$ k_t = L_{af} I_f = \frac{V_{dc}}{R_f + j \omega L_f}$$
これら、永久磁石式・他励式・分巻式において、電源電圧、界磁を一定とした場合の速度特性、トルク特性を考えます。速度特性、トルク特性はそれぞれ図2・図3のようなイメージになります。

速度が上昇すると逆起電力が大きくなり、電流が流れなくなる

電機子電流が大きくなると、トルクが大きくなる
速度特性は電機子電流に応じて低下していきます。これは電機子の電気回路から導出できます。定常状態においては、時間変化がないためインダクタンスの項を無視します。その結果、電流に応じて速度が低下する特性を得ることができます。
トルク特性は、電機子電流に比例しています。トルクはローレンツ力起因で発生しているため、磁束が一定であれば、電流に比例するようになります。
直巻式の速度特性、トルク特性
直巻式において、成立する微分方程式を考えます。DCモーターの回路イメージを図4に示します。

直巻式においては、電機子巻線と直列に界磁巻線が接続されます。このとき、電機子の回路においては次の式が成立します。
$$V_{dc} = (R_a + R_s)I_a + (L_a + L_s) \frac{dI_a}{dt} +k_v \omega $$
また、回転系においては次の運動方程式が成立します。
$$ J \frac{d \omega}{dt} = k_t I_a – D \omega – T_{load}$$
また、トルク係数を考えます。トルク係数は他の方式と同様に界磁巻線電流に比例します。この界磁巻線電流は、負荷に応じて変動します。電機子と界磁巻線の相互インダクタンスをLafとすると、トルク係数は次の式で表されます。
$$ k_{t} = L_{as} I_{a}$$
直巻式において、電源電圧を一定とした場合の速度特性、トルク特性を考えます。速度特性、トルク特性はそれぞれ図5・図6のようなイメージになります。

速度と電機子電流の間には反比例の関係がある

トルクは電機子電流の二乗に比例する
速度特性は電機子電流に応じて低下していきます。これは電機子の電気回路から導出できます。定常状態においては、時間変化がないためインダクタンスの項を無視します。その結果、電流に応じて速度が低下する特性を得ることができます。
トルク特性は、電機子電流に比例しています。トルクはローレンツ力起因で発生しており、磁束も電流に比例しているため、トルクは電流の二乗に比例します。
複巻式の速度特性、トルク特性
複巻式において、成立する微分方程式を考えます。複巻式のDCモーターの回路イメージを図7に示します。

複巻式においては、電機子巻線と直列の界磁巻線と電機子巻線と並列の界磁巻線があり、それぞれの磁束が合成されます。このとき、電機子の回路においては次の式が成立します。
$$ V_{dc} = (R_a + R_s)I_a + L_s \frac{dI_a}{dt}+L_{sp} \frac{dI_p}{dt} + \omega(L_{as} I_{a} + L_{ap} I_p)$$
複巻式では微分方程式の構成が若干変わります。右辺第一項は抵抗による電圧降下、右辺第二項は自己インダクタンスによる電圧降下、右辺第三項は直列と並列の巻線による相互インダクタンスによる電圧降下、右辺第四項は直列の界磁巻線と並列の界磁巻線からの逆起電力の和を示しています。
また、並列の励磁系の回路も考えます。並列の励磁回路では次の式が成立します。
$$ V_{dc} = R_p I_p + L_p \frac{dI_p}{dt} + L_{sp} \frac{dI_a}{dt}$$
直列と並列の巻線による相互インダクタンスによる電圧降下が追加されています。
また、回転系においては次の運動方程式が成立します。
$$ J \frac{d \omega}{dt} = k_t I_a – D \omega – T_{load}$$
トルク係数を考えます。トルク係数は直列の界磁巻線と並列の界磁巻線の和になります。電機子と界磁巻線の相互インダクタンスをLas,Lapとすると、トルク係数は次の式で表されます。
$$k_t = (L_{as} I_a + L_{ap} I_p)$$
複巻式において、電源電圧を一定とした場合の速度特性、トルク特性を考えます。速度特性、トルク特性はそれぞれ図8・図9のようなイメージになります。


複巻式では、直列の界磁巻線と並列の界磁巻線の影響を受けます。速度特性もトルク特性の概形は、図8・図9のとおりですが、直巻式と分巻式の中間のような特性となります。
まとめ
このページでは直流モーターの電気機械特性を紹介しました。ポイントは以下のとおりです。
- 直流モーターの特性として、速度特性・トルク特性を利用しました。
- 直流モーターの特性は、励磁方式により変化します。
- 永久磁石式・他励式・分巻式の回転速度は負荷により線形に低下し、トルクは負荷により線形に増加します。
- 直巻式の回転速度は負荷により線形に低下し、トルクは負荷により線形に増加します。
- 複巻式は分巻式と直巻式の中間の特性を持ちます。
