半導体には様々な素子が存在しますが、最も基本的な素子はダイオードです。このページでは、ダイオードの特性について、細かく確認していきます。
なお、ダイオード応用回路(半波整流整流回路、全波整流回路)についてはこちらをご参照ください。
ダイオードの役割と回路記号
ダイオードは電流を一方向のみ通過させる素子になります。その回路記号は図1のとおりです。

A側の端子をアノード、K側の端子をカソードと呼びます。電流はアノード側からカソード側に流すことができますが、カソード側からアノード側に流すことはできません。
ダイオードの構造
ダイオードの構造にはいくつかありますが、代表的なものは図2のとおりです。

この構造はいわゆるpn接合になります。別ページにて説明したとおり、順方向に電圧をかけた場合は空乏層が狭くなり、電流が流れます。逆方向に電圧をかけた場合は空乏層が広がり、電流が流れません。
ダイオードのI-V特性
ダイオードの電流と電圧の間の関係を整理します。理想ダイオードと実際のダイオードのI-V特性を図3,4に示します。I-V特性について、V>0の導通特性とV<0の素子特性に分けて整理します。

正の電圧で導通し、負の電圧で絶縁となる

導通するために順方向電圧が必要だし、導通後も抵抗が存在
負電圧印加時はリークが発生し、過大な負電圧で大電流が流れる。
ダイオードの導通特性
理想ダイオードにおいては順方向電圧が印加されることにより直ちに電流が流れるようになります。しかしながら実際のダイオードにおいては、pn接合の電位障壁を乗り越える必要があるため、一定の電圧を超えないと電流が流れ始めません。この電圧を順方向電圧といい、数百mV~数V程度必要となります。
また、理想ダイオードにおいては、0Vを超えたら、無限に電流を流せるようになっています。しかしながら、ダイオードは無損失の超電導物質ではありません。電流は電圧に対して垂直に立ち上がるのではなく、若干の傾きをもっています。
ダイオードの阻止特性
理想ダイオードにおいては逆方向電圧が印加された場合、全く電流が流れません。しかしながら、実際のダイオードにおいては、数uA~数mAの漏れ電流が流れます。これは若干とはいえ、ホールと電子のキャリアが動作するためです。
また、実際のダイオードに対して大きな逆方向電圧を印加すると、導通するようになります。この時の電圧をツェナー電圧といいます。導通する原理はツェナー降伏とアバランシェ降伏の2種類あります。どちらが優先的かというのは、素材によります。
ツェナー降伏は、トンネル効果が原因になります。細かい話はバンド理論の理解が必要なので、ここでは概要だけ紹介します。高濃度にドープされた半導体においては、空乏層が狭く図5のようなエネルギーバンドが形成されます。

負電圧がかかることで空乏層が狭くなりトンネリングが発生する
アバランシェ降伏は電界が大きくなり、キャリアの速度が増加することが原因となります。図6のイメージです。キャリアの速度が増加すると、格子と衝突した際に新たな電子と正孔が発生します。この動作が繰り返されることで、キャリアがどんどん増えて導通するようになります。

高速な電子が原子と衝突し、新たな電子とホールが発生する
ダイオードの運転点の導出
ダイオードが図4のような非線形な特性を持つことが分かりました。実際の運転点がどうなるか考えます。例えば、図7のようなダイオードと抵抗から構成される回路を考えます。

このように回路を構成すると、ダイオードが取れる電流と電圧に回路からの制約が発生します。図5の回路であれば、ダイオードの順方向電圧は次の制約が発生します。
$$ V_f = V_{dc} – RI $$
一方で、ダイオードのV-I特性も満たす必要があります。つまり、回路を組んだ時の運転点は図8にて考えることができます。

ダイオード特性と回路特性の交点が運転点となる
ダイオードの特性と回路特性の両方満たすためには、ダイオードの曲線上であり、かつ回路特性の曲線上にある必要があります。その結果、図6の交点が運転点になります。
ダイオードのスイッチング特性
ダイオードのI-V特性は定常状態の特性です。ダイオードが導通状態から非導通状態に切り替わるような動特性について考えます。ダイオードが導通状態から非導通状態に切り替わるときの電流波形イメージを図9に示します。

きれいにオフになるのではなく、リカバリ電流が流れてからオフになる
導通状態から非導通状態に切り替わるとき、導通時の電流から減少していきます。電流が減少していくと、0Aでとまるのではなく逆方向に電流が流れ始めます。Irpまで電流が流れ、その後は逆方向電流も減少して0Aに向かっていきます。この時のIrpは導通状態の電流に依存します。
この時、ダイオード電流が0Aになったタイミングから、電流ピークを越え0.1Irpになったタイミングまでを逆回復時間と呼び、trrと記載します。
このように、実際のダイオードではリカバリー特性があることを認識する必要があります。
ダイオードの種類
現実的なダイオードは理想的なダイオードとは異なります。その特性に応じて、様々なダイオードが存在します。この項ではダイオードの種類を紹介します。
汎用ダイオード
上述の特性を持った、一般的なダイオードを汎用ダイオードと呼びます。回路記号と電子部品の概形を図10に示します。

ファストリカバリダイオード
ダイオードのうち、リカバリー時間が短いものを指します。パワーエレクトロニクス回路のような高速スイッチングにおいては、ダイオードのリカバリー時間がスイッチングのボトルネックになることがあります。そういったパワーエレクトロニクス用途で利用されることが多いデバイスです。
ショットキーバリアダイオード
ショットキーバリアダイオードは順方向電圧が低く、リカバリー時間が短い優れたダイオードです。回路記号と電子部品の概形を図11に示します。

優れた特性を持ちますが、耐圧が低いことが多く低圧用途にて利用されます。
ツェナーダイオード
ダイオードは逆方向電圧を印加すると、降伏現象が発生します。これを積極的に使用するダイオードをツェナーダイオードといいます。回路記号と電子部品の概形を図12に示します。

ある一定の電圧を超えると抵抗が小さくなる特性から、ノイズからの保護として利用することができます。
発光ダイオード
電流が流れることで光を発生する素子になります。いわゆるLEDです。回路記号と電子部品の概形を図13に示します。

電気を直接光エネルギーに変換するため、従来の白熱電球や蛍光灯と比較して高効率なデバイスです。
フォトダイオード
光により電流が流れる素子になります。回路記号と電子部品の概形を図14に示します。

光センサーなどで利用することができます。また、太陽光セルもフォトダイオードの一種といえます。
まとめ
このページでは、ダイオードの特性について詳細に記述しました。ポイントは以下のとおりです。
- ダイオードは一方向のみに電流を流す素子です。pn接合により、この特性を実現します。
- ダイオードのI-V特性を紹介しました。実際のダイオードでは、電流が流れ始めるために順方向電圧が必要であったり、逆方向に過大な電圧を印加すると降伏現象が発生します。

