ここまで単相交流を直流に変換する回路を扱いました。ここでは、三相交流電源を直流に変換する三相全波整流回路を紹介します。
三相全波整流回路の回路構成と動作
三相全波整流回路は三相交流電源を直流に変換します。動作イメージを図1に示します。3相交流電源は120度ずつ位相がずれた単相交流を三つ重ねた電源になります。このような電源を直流に変換します。

三相全波整流回路の回路構成を図2に示します。赤色で示されている箇所は最大値選択回路、青色で示されている箇所は最小値選択回路です。動作原理は単相全波整流回路と同じです。これらの回路を動かした場合の負荷の正側、負側の電圧は図3、図4のとおりです。なお、3相交流の電圧値は6600V、周波数は50Hzとしています。

赤色が最大値選択、青色が最小値選択に相当
最大値選択回路を利用することでa,b,c相の最大電圧が得られ、図3黒線の波形を得られます。120度ごとに導通するダイオードが切り替わります。

最小値選択回路を利用することでa,b,c相の最小電圧が得られ、図4黒線の波形を得られます。120度ごとに導通するダイオードが切り替わります。

以上を踏まえて、負荷に出力される波形が図5のマゼンタ色の波形になります。60度ごとにダイオードが切り替わることが分かります。

最大値選択と最小値選択の差分が負荷電圧として出力される
三相全波整流回路の電流経路
図3、図4から3相交流のうち、どの電圧が選択されているか理解することができます。以下のとおり、整理します。
最大値選択回路の導通経路
最大値選択回路の導通経路について、図3から以下の表1のとおりになります。
| A相の位相 | 導通相 |
|---|---|
| 0~30° | C相 |
| 30~150° | A相 |
| 150~270° | B相 |
| 270~360° | C相 |
最小値選択回路の導通経路
最小値選択回路の導通経路について、図4から以下の表2のとおりになります。
| A相の位相 | 導通相 |
|---|---|
| 0~90° | B相 |
| 90~210° | C相 |
| 210~330° | A相 |
| 330~360° | B相 |
電流経路の可視化
最大値選択回路と最小値選択回路の結果を図示すると、図6のとおりになります。位相が60°進むたびに導通経路が変わることが分かります。

交流位相に応じてダイオードの導通相が変わり、直流電圧を出力できるようになる
三相全波整流回路の平均出力電圧
定常状態における三相全波整流回路の出力電圧を計算します。図5のとおり、60°ごとにスイッチングを繰り返し、同じ出力波形を出力します。そこで、図6①の場合の平均電圧を計算します。
出力電圧の平均電圧の一般的な計算式は次のとおりです。
$$ V_{dc} = \frac{1}{T} \int_{T_{0}}^{T+T_{0}} V_{load} d\theta$$
次に①の区間を利用します。つまり\( T_{0}=\frac{6}{\pi}, T=\frac{\pi}{3} \)を代入します。
$$ V_{dc} = \frac{1}{T} \int_{T_{0}}^{T+T_{0}} V_{load} d\theta = \frac{3}{\pi} \int_{\frac{\pi}{6}}^{\frac{\pi}{2}} V_{load} d\theta $$
ここで\(V_{load}\)に注目します。①の区間では図6から、負荷電圧はA相電圧とB相電圧の差分になります。
$$ V_{dc} = \frac{3}{\pi} \int_{\frac{\pi}{6}}^{\frac{\pi}{2}} \frac{\sqrt{2}}{\sqrt{3}}V_{s} {\sin \theta – \sin (\theta – \frac{2\pi}{3})}d\theta $$
ここで、Vsは線間電圧を示します。また、\( \frac{1}{\sqrt{3}} \)は線間電圧を相電圧に変換するための係数、\(\sqrt{2}\)は実効値をピーク値に変換するための係数です。この式を展開すると次の結果が得られます。
$$ V_{dc} = \frac{3\sqrt{2}}{\pi}V_s \simeq 1.35V_{s}$$
電源電圧6600Vの場合、Vdc=8910Vとなります。図5のマゼンタ色の波形も計算値に近い波形が出ていることが分かります。
まとめ
このページでは、三相全波整流回路の概要、回路構成、動作原理、出力電圧などを計算しました。ポイントは以下のとおりです。
- 三相全波整流回路は三相交流電源を直流回路に変換する回路です。
- 三相全波整流回路は最大値選択回路と最小値選択回路を利用して交流を直流に変換します。
- 出力電圧は交流電圧(線間実効値)のおよそ1.35倍になります。

