変圧器の損失と効率計算

変圧器を運転するにあたっては、変圧器内部で損失が発生します。変圧器を利用するのは昇圧による送電線の損失減と変圧器による損失増で後者の方が小さいためです。ここでは、変圧器の損失について、負荷電力依存性を整理するとともに、変圧器効率について考えます。

変圧器にて発生する損失

変圧器を運転させると様々な損失が発生します。ここではどのような種類があるか整理していきます。

変圧器の損失の全体像

図1に変圧器の損失の全体像を示します。

図1 変圧器の損失の分類
大別して無負荷損と負荷損に分けられる

変圧器の損失は負荷に依存しない無負荷損と負荷に依存する負荷損に大別することができます。以下ではそれぞれの損失にどのようなものが含まれるか解説します。

変圧器の無負荷損

無負荷損としては鉄損と誘電損と励磁電流損があります。実用上問題となるのは鉄損であり、他は無視できる大きさになります。

鉄損はヒステリシス損と渦電流損から構成されます。ヒステリシス損は鉄心のヒステリシス特性により発生するものであり、その損失はループの回数、つまり周波数に比例するものになります。具体的には次の式で表されます。

$$W_h = k_h G f B_m^n$$

また、各変数は次のとおりです。

\begin{eqnarray}
k_h &:& ヒステリシス損失係数\\
G &:& 鉄心重量\\
B_m &:& 最大磁束密度\\
n &:& B_m < 1の時 n=1.5~1.7\\
& &B_m > 1のときn=2
\end{eqnarray}

また、渦電流による損失があります。渦電流損失は次の式のとおりです。

$$W_e = k_e G t f^2 B_m^2$$

ここで新しく導入された変数tは次のとおりです。

$$ t:鉄板厚さ$$

渦電流は周波数の二乗に比例することが分かります。また、鉄板の厚さに比例することも分かります。そのため、一般に鉄心は薄い電磁鋼板を積層した構造を取ります。

その他、誘電体損は絶縁物による損失、励磁電流損は励磁電流による一次巻線の損失になります。これらは非常に小さい値であり、無視しても問題ありません。

従って無負荷損は次のように表現できます。

$$W_f = W_h + W_e$$

変圧器の負荷損

負荷損は銅損と漂遊負荷損から成立します。

銅損は巻線の内部抵抗により発生する損失です。巻線の内部抵抗をrdとすれば損失は次のとおりです。

$$W_r = r_d I^2$$

実際の損失は、巻線の内部抵抗より大きいものになり、その損失を漂遊負荷損と呼びます。漂遊負荷損には主に二つの要因があります。

一つは漏れ磁束による渦電流です。漏れ磁束が導体自身の断面に鎖交するため、導体内に渦電流が発生し、電流密度が不均一になり、あたかも導体断面先が小さくなったかのようになります。その結果抵抗が増加したようなふるまいを見せます。

もう一つが構造材料に発生する損失です。漏れ磁束が構造材料と鎖交し、それらに渦電流やヒステリシス損が発生します。

これらの漂遊負荷損も電流の二乗に比例する特性を持つため、負荷損全体としても次のように抵抗に二乗に比例する特性を持ちます。

$$W_l = rI^2$$

変圧器の運転効率の計算

変圧器の効率は運転点により異なります。ここでは、変圧器の効率について計算します。

変圧器の効率

変圧器の効率は変圧器に入力される電力と出力される電力の比率で表すことができます。すなわち、次のとおりです。

$$\eta = \frac{P_{out}}{P_{in}}$$

しかしながら、大容量機器の場合は効率測定のために実負荷にて運転を行うのは容易ではないため次の規約効率を利用します。

変圧器の規約効率

規約効率とは、効率を(有効出力)と(有効出力と全損失の和)で表したものになります。数式で表すと次のとおりです。

$$\eta = \frac{V_2 I_2 \cos{\phi}}{V_2 I_2 \cos{\phi} + W_{f} + W_{l}}$$

ここで、Wfは鉄損、Wlは銅損を示します。鉄損は電流に依存せず、銅損が電流の二乗に依存することを利用すると効率は次のとおりです。

$$ \eta = \frac{V_2 I_2 \cos{\phi}}{V_2 I_2 \cos{\phi} + W_{f} + rI^2} = \frac{V_2 \cos{\phi}}{V_2 \cos{\phi}+\frac{W_f}{I_2}+rI_2}$$

効率が負荷電流によって変動することが分かります。ここで、効率最大点を考えます。電圧・力率一定で、負荷電流が変わった場合、数式から

$$\frac{W_f}{I_2} + rI_2$$

が最小となる場合が効率最大になります。最小となるためには微分値が0になる必要があります。つまり、

$$f = \frac{W_f}{I_2} + rI_2$$

とした場合に

$$ \frac{\partial f}{\partial I_2} =-\frac{W_f}{I_2^2} + r =0$$

が成立します。つまり効率最大となるとき

$$rI_2^2 = W_f$$

となります。左辺は銅損を意味していますので、効率最大点となるのは銅損と鉄損が一致するときとなります。

変圧器効率の負荷依存性

規約効率の計算から、効率が負荷依存性を持つこと、効率最大点が銅損と鉄損が一致する点であることが分かりました。ここでは、事例として変圧器容量30kVA, 定格電圧6600V, 無負荷損150W, 30kW運転時の負荷損550Wの変圧器の負荷依存性を計算しました。その結果を図2に示します。

図2 変圧器の効率曲線
鉄損=銅損となるタイミングで最大効率になる

変圧器の効率を青線で示しています。低負荷の場合は効率が著しく低いため、95%以上の領域のみをプロットしています。変圧器の効率は非常に高く、多くの領域で97.5%を超えています。また、変圧器の最大効率は負荷率52.5%の時であり、98.1%となっています。

一方、損失の内訳をみると銅損が出力の二乗で増えていき、鉄損は出力に依存しません。ある点で銅損と鉄損が交わり、その点は負荷率52.5%の時となっています。この負荷率は効率最大点と一致しています。

このように、変圧器の効率が負荷により変動することが図2から分かります。

まとめ

このページでは、変圧器の損失と効率について紹介しました。ポイントは以下のとおりです。

  • 変圧器の損失には様々なものがあり、主要なものは鉄損と銅損です。
  • 鉄損は負荷に依存せず、銅損は負荷の二乗に比例して増加します。
  • 変圧器の効率を測定するのは困難なため、損失計算を利用した規約効率が利用されます。
  • 変圧器の効率は負荷依存性がありますが、多くの領域で高効率となります。
  • 効率の最大点は鉄損と銅損が一致するときになります。
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