別ページにて紹介した通り、変圧器の効率は負荷に依存します。特に低負荷の場合は鉄損の割合が大きくなるため、効率が低下します。変圧器を並行運転している場合、低負荷の変圧器が何台も運転していると効率が悪いのが直感的にわかります。ここでは、並行運転しているときの運転台数をどうすればよいのか考えます。
変圧器の効率曲線
変圧器の損失は、主に負荷に依存しない鉄損と負荷の二乗に比例する銅損から構成されます。その結果、効率は負荷に依存することになります。変圧器容量10kVA, 無負荷損50W, 10kW運転時の負荷損250Wの変圧器の負荷依存性を図1に示します。

変圧器の効率は鉄損=銅損となる運転点で最大となる
この変圧器では、4400W出力の時に最大効率97.8%となることが分かります。
変圧器の全日効率
変圧器効率が負荷により変動することが図1から分かりました。一方、変圧器が利用される電気設備の負荷は時々刻々と変動していきます。イメージは図2のとおりです。

昼に需要が多く、夜間に需要が少ないパターンを例題とする
一般に電力需要は昼間が多くなり、夜間が少なくなる傾向にあります。これに伴い、変圧器の効率も時々刻々と変化するわけです。そこで、一日を通しての効率を全日効率といいます。全日効率は次の式で表せます。
$$全日効率 = \frac{一日を通しての出力量[kWh]}{一日を通しての入力量[kWh]} = \frac{\int_0^{86400} P_{out}(t) dt}{\int_0^{86400} P_{in}(t) dt}$$
変圧器の全日効率の計算例
負荷電力は時々刻々と変わりますが、これを計算するのは簡単ではありません。ここでは例題として、負荷電力が簡単な離散的な関数の場合を計算します。負荷電力が図3の場合を考えます。

計算しやすさのために、離散的な運転パターンとする
これを図1の特性を持つ10kVA, 鉄損50W, 全負荷時の銅損250Wの変圧器で動作させます。この時の変圧器の全日効率を考えます。
鉄損は負荷に依存しないこと、銅損は負荷の二乗に比例することから、各時間帯の入力電力と出力電力は表1のとおりになります。
| 時刻 | 出力[kW] | 無負荷損 [W] | 負荷損(銅損) [W] | 入力 [kW] | 効率 |
| 0~6, 19~24 | 2 | 50 | \( 250 \times (\frac{2}{10})^2=10\) | 2.06 | 97.1% |
| 6~10, 16~18 | 7 | 50 | \( 250 \times (\frac{7}{10})^2=122.5\) | 7.1725 | 97.6% |
| 10~16 | 10 | 50 | \( 250 \times (\frac{10}{10})^2=250\) | 10.30 | 97.1% |
時刻(=出力)により効率が変化する
このように各時刻において無負荷損と負荷損を計算することで、各時刻の入力電力が分かります。また、効率が時間ごとに変化していることも分かります。
次に全日効率を出すために、一日の電力量に換算します。出力電力量は次のとおりです。
$$ 出力 = 2 \times 12 + 7 \times 6 + 10 \times 6 = 126 [kWh]$$
同様に入力電力量は次のとおりです。
$$ 出力 = 2.06 \times 12 + 7.1725 \times 6 + 10.30 \times 6 = 129.6 [kWh]$$
従って全日効率は次のとおりです。
$$全日効率 = \frac{一日を通しての出力量[kWh]}{一日を通しての入力量[kWh]} = \frac{126}{129.6} = 0.972$$
このように各時刻の入力と出力を積算することで、全日効率を計算できます。この例題では、簡単のために離散的な需要としましたが、連続的な需要においても積分を行えば全日効率を計算できます。
複数運転の場合の全日効率計算例
先ほどの問題は変圧器1台で運転していました。しかしながら、10kVAの変圧器で10kWの出力を出すには力率1の必要があります。無効電力が発生している場合には、変圧器容量を超過するため10kW出力することは望ましくありません。そこで、先ほどの設備において、同一の変圧器を追加して運転させてみましょう。
変圧器2台で運転させたときの各時間帯の入力電力と出力電力は表2のとおりになります。
| 時刻 | 出力[kW] | 変圧器A 無負荷損 [W] | 変圧器A 負荷損(銅損) [W] | 変圧器B 無負荷損 [W] | 変圧器B 負荷損(銅損) [W] | 入力 [kW] | 効率 |
| 0~6, 19~24 | 2 | 50 | \( 250 \times (\frac{1}{10})^2=2.5\) | 50 | \( 250 \times (\frac{1}{10})^2=2.5\) | 2.105 | 95.1% |
| 6~10, 16~18 | 7 | 50 | \( 250 \times (\frac{3.5}{10})^2=30.6\) | 50 | \( 250 \times (\frac{3.5}{10})^2=30.6\) | 7.161 | 97.8% |
| 10~16 | 10 | 50 | \( 250 \times (\frac{5}{10})^2=62.5\) | 50 | \( 250 \times (\frac{5}{10})^2=62.5\) | 10.225 | 97.8% |
時刻(=出力)により効率が変化する
また、変圧器1台の時と効率の様子が変わっていることがわかる
このように各時刻において、各変圧器の無負荷損と負荷損を計算することで、各時刻の入力電力が分かります。また、効率が時間ごとに変化していることも分かります。
次に全日効率を出すために、一日の電力量に換算します。出力電力量は次のとおりです。
$$ 出力 = 2 \times 12 + 7 \times 6 + 10 \times 6 = 126 [kWh]$$
同様に入力電力量は次のとおりです。
$$ 出力 = 2.105 \times 12 + 7.161 \times 6 + 10.225 \times 6 = 129.6 [kWh]$$
従って全日効率は次のとおりです
$$全日効率 = \frac{一日を通しての出力量[kWh]}{一日を通しての入力量[kWh]} = \frac{126}{129.6} = 0.972$$
変圧器の台数制御
表1と表2を比較すると、負荷により効率が異なることが分かります。例題で使用した10kVA, 無負荷損50W, 全負荷損250Wの変圧器を1台運転した場合と二台運転した場合の効率曲線を図4に示します。

2台になると変圧器の容量が大きくなり、効率が最大となる運転点が大容量側にシフトする
効率曲線から、約6300Wよりも負荷が多い場合は変圧器を2台で運転させ、6300Wよりも負荷が小さい場合は変圧器を1台で運転させた方が効率が良いことが分かります。したがって、各時刻において、図5のように運転させることで、全日効率を上げることが可能になります。

低負荷(6300W未満)の時は変圧器1台で運転し、高負荷(6300W以上)の時は変圧器2台で運転する
今回は、需要や変圧器仕様を決め打ちで計算を行いましたが、同様の考え方で変圧器の並行運転時の運転台数を決めることができます。適切に変圧器の運転台数を設定することで、効率よく運転させることが可能になります。
まとめ
このページでは変圧器の並行運転時の運転台数について紹介しました。ポイントは以下のとおりです。
- 変圧器の効率は負荷によって変化します。また、変圧器の負荷となる設備は時々刻々と需要が変化します。
- 一日単位での変圧器の効率を全日効率といいます。
- 変圧器を複数台運転している場合、全日効率を向上させるためには、適切な変圧器運転台数を選ぶ必要があります。


