変圧器の並行運転のシミュレーション

別ページにて、変圧器の並行運転について紹介しました。その中で、変圧器の並行運転には条件があることを記述しています。このページでは、Simscapeを用いて、変圧器の並行運転をシミュレーションしてみます。

変圧器の並行運転シミュレーション

Simscapeを用いて、変圧器の並行運転のシミュレーションを行います。

シミュレーションの対象とする回路

並行運転を模擬するにあたり、対象とする回路を決めます。対象とする回路は図1のようなものとします。

図1 変圧器の並行運転のシミュレーション回路

この変圧器の条件は、並行運転の条件を満たしています。つまり、極性は一致し、変圧比が一致し、インピーダンスが容量に反比例し、抵抗と漏れインダクタンスの比率が等しくなっています。この状態のシミュレーションを実施します。

変圧器の並行運転のシミュレーションモデル

Simscapeのシミュレーションモデルを図2に示します。

図2 Simscapeによる変圧器の並行運転のシミュレーションモデル

図1のとおり、6600Vの電源に2台の変圧器を介して、力率0.8の負荷に電力を供給します。変圧器のパラメータは図1のとおりとなっています。変圧器二次側の電流と電圧を測定しています。

変圧器の並行運転のシミュレーション結果

図2のモデルを使用し、200Vで15kVAとなる負荷を利用した場合のシミュレーション結果を図3に示します。

図3 変圧器の並行運転のシミュレーション結果
変圧器Aと変圧器Bでは変圧器容量に比例した負荷分担になっている

変圧器Aと変圧器Bと負荷の電流が測定されています。変圧器内の電圧降下により変圧器二次側の電圧は200Vより若干低下しています。その結果、負荷は75Aよりも若干低下しています。

次に、電流分担を考えます。変圧器Aの電流は49.63A、変圧器Bの電流は24.81Aとなっており、変圧器容量に比例した分配をしています。また、変圧器Aも変圧器Bも負荷も力率が0.8であり、電流が同相であることが分かります。

なお、負荷容量を10kVAや5kVAなど変更しても変圧器容量に比例した電流分配、電流位相が同相といった特徴を確認することができます。

変圧器の並行運転条件を満たさない場合のシミュレーション

先ほどのシミュレーションは変圧器の並行運転条件を満たした場合でした。その条件を崩した場合の動作を確認したいと思います。

①変圧器の極性が反転している場合

変圧器の極性を反転します。これはシミュレーションモデルの結線で行います。モデルは図4のとおりです。

図4 極性反転している場合のシミュレーションモデル

極性を反転させたモデルにて、得られたシミュレーション結果を図5に示します。

図5 極性が反転している場合のシミュレーション結果

負荷へは25A弱である一方、変圧器Aと変圧器Bに約3400A越えの電流が流れています。この大電流が変圧器間に流れる循環電流によるものです。

循環電流の概算値を計算します。極性反転時の循環電流は次の式で表されます。

$$ I_c = \frac{E_{2a} + E_{2b}}{\sqrt{(r_a+r_b)^2+(x_a+x_b)^2}}$$

次に、変圧器の二次側換算回路を考えます。変圧器の二次側換算回路を図6に示します。

図6 変圧器の二次側換算の等価回路
変圧比が大きい場合、二次側の成分が主となる

ここで、励磁回路の影響は小さいので無視します。また、今回の変圧器では、\( \frac{r1}{a^2} << r2, \frac{x1}{a^2} << x2 \)が成立するため、一次巻線側の影響も無視します。この時、循環電流の概算値は、次のとおりです。

$$I_c = \frac{200+200}{\sqrt{(0.01+0.02)^2+(2 \pi 60 \times 0.0001 + 2 \pi 60 \times 0.0002)^2}} = 3419 [A]$$

この概算値はシミュレーションの値と合致しており、想定どおりの循環電流が発生していることが分かります。

変圧比が異なる場合

二つの変圧器の変圧比が異なる場合も循環電流が流れます。その場合のシミュレーションモデルを図7に示します。

図7 変圧比が異なっている場合のシミュレーションモデル

図7のとおり、変圧器Bの変圧比を220Vに変更しています。

このモデルを用いてシミュレーションした結果が図8になります。

図8 変圧比がずれている場合のシミュレーション結果
変圧器Bの電圧が高くなっており、負荷に流れる電流も75Aよりも上昇している

変圧器Bの変圧比の効果により変圧器二次側電圧が上昇しています。その結果、負荷に流れる電流も75Aより上昇しています。

次に各変圧器の電流を見ると変圧器Aが134A, 変圧器Bが191.6Aと明らかに負荷電流よりも大きな電流が流れています。これは変圧器間に流れる循環電流によるものです。

循環電流は次の式で表されます。

$$ I_c = \frac{E_{2a} – E_{2b}}{\sqrt{(r_a+r_b)^2+(x_a+x_b)^2}}$$

変圧器の極性が変わったときと同様の考え方で値を代入すると、

$$I_c = \frac{200-220}{\sqrt{(0.01+0.02)^2+(2 \pi 60 \times 0.0001 + 2 \pi 60 \times 0.0002)^2}} = -170.7 [A]$$

となります。実際、変圧器Aや変圧器Bには170Aオーダーの電流が流れていることから、概ね想定どおりの結果となっていることが分かります。

インピーダンスが容量に反比例しない場合

二つの変圧器のインピーダンスが容量に反比例しない場合、電流分配が適切に行われません。その場合のシミュレーションモデルを図9に示します。

図9 インピーダンスが容量に比例しない場合のシミュレーションモデル

変圧器Bの容量が半分になっているにもかかわらず、抵抗とインダクタンスが変圧器Aと同じという場合になります。

このモデルを用いてシミュレーションした結果が図10になります。

図10 インピーダンスが容量に比例しない場合のシミュレーション結果
循環電流発生して発生していないが、負荷が変圧器容量に比例していない

変圧器Aと変圧器Bの電流和が負荷電流になっており、負荷も変圧器Aも変圧器Bも力率0.8で同相で運転しているため、循環電流は発生していません。しかしながら、変圧器Aと変圧器Bには等しい電流が流れています。そのため、変圧器容量に比例した電流分配になっていません。

抵抗とインダクタンスの比率が異なる場合

抵抗とインダクタンスの比率が異なる場合は循環電流が流れます。モデルを図11に示します。

図11 変圧器Bの抵抗とインダクタンスの比率が変わった場合のシミュレーションモデル

変圧器Aと比較して、変圧器Bでは抵抗成分が多めに設定されています。

このモデルを用いてシミュレーションした結果が図12になります。

図12 変圧器Bの抵抗とインダクタンスの比率が変わった場合のシミュレーション結果
変圧器Aと変圧器Bの和が負荷電流とならないため、若干の循環電流が発生していることがわかる

なぜ循環電流が発生するかというと図13のベクトル図から解釈できます。

図13 変圧器のベクトル図

並行運転している変圧器の誘導起電力と端子電圧は等しくなります。誘導起電力ベクトルと端子電圧ベクトルの差は抵抗とリアクタンスの電圧降下ベクトルによるものです。電圧降下量はrI, xIに依存するため、電流に反比例して抵抗、リアクタンスを与えれば同じベクトル図を描くことができます。

抵抗とリアクタンスの比率を崩して同じ電圧降下ベクトルを作るためには図13のとおり、電流ベクトルの位相を変える必要があります。位相が異なるということは循環電流が発生しているということになります。

まとめ

このページでは変圧器の並行運転のシミュレーションを行いました。ポイントは以下のとおりです。

  • 並行運転の条件を守れば、循環電流が流れることなく、効率的に運転することが可能です。
  • 極性が反転したり、巻線比が異なる場合は、大きな循環電流が流れる恐れがあり、避けなければなりません。
  • インピーダンスが容量に反比例していない場合、電流分担が容量に比例しません。
  • 抵抗とリアクタンスの比が一定ではない場合、循環電流が流れます。
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